住宅ローンと車のローン
CFP® 吉田貴彦(よしだたかひこ)
1.住宅ローンとオートローンは併用できるか
住宅ローンとオートローンは併用できる
住宅ローンとオートローンの両方を借りようとする場合、金融機関が定める返済比率を超えなければ併用することができます。返済比率とは、年収に対する借入金の年間返済額の割合を言います。
例えば住宅ローンフラット35では、年収によって返済比率の上限を次のように定めています。
年収 | 400万円未満 | 400万円以上 |
---|---|---|
返済比率の基準 | 30%以下 | 35%以下 |
返済比率はフラット35のほか、フラット35以外の住宅ローン、オートローン、教育ローン、カードローン、クレジットカードによるキャッシング、商品の分割払いやリボ払いによる購入の返済額も含めたすべての借入金の返済額で計算します。
このためオートローンを利用している場合は、その返済額を含めて計算することになるので、住宅ローンの希望額が減らされることもあります。
2.オートローンによる住宅ローンの借入可能額
フラット35を利用して住宅を購入する場合、オートローンの返済がどの程度影響するかを計算してみます
計算条件
- 住宅ローン
-
- 返済期間:35年
- 金利タイプ:固定金利型1.32%
- 返済方法:元利均等返済・ボーナス払いなし
- オートローン
-
- 借入額:100万円
- 返済期間:7年
- 金利タイプ:変動金利型2.0%
- 返済方法:元利均等返済・ボーナス払いなし
オートローンの利用がない場合
年収 | 500万円 | 600万円 | 700万円 |
---|---|---|---|
毎月の返済額の上限 | 145,833円 | 175,000円 | 204,166円 |
借入可能額 | 4,903万円 | 5,884万円 | 6,865万円 |
オートローンを利用している場合
年収 | 500万円 | 600万円 | 700万円 |
---|---|---|---|
毎月の返済額の上限 | 145,833円 | 175,000円 | 204,166円 |
オートローンの 毎月返済額 12,767円を 引いた上限 |
133,066円 | 162,233円 | 191,399円 |
借入可能額 | 4,474万円 | 5,455万円 | 6,435万円 |
以上のようにオートローンの有無によって、住宅ローンの借入額に429万円の差が出ることになりました。
3.住宅ローンとオートローン併用時の注意点
住宅ローンの申込みはオートローン完済後
ここまで見てきたようにオートローンの返済が残っていると住宅ローンの審査に影響し、希望する借入額が借りられないケースがあります。できれば住宅ローンの申込み前にオートローンを完済しておくことが望ましいでしょう。
年収が高い人や借入希望額が少ない人は、オートローンの返済があったとしても融資額に影響しないこともあります。
住宅ローン借入後のオートローンの利用は家計への負担を考慮する
住宅ローンの契約後に自動車ローンを利用する場合、すべての借入の返済額の年収に占める返済比率が高くなるので、住宅ローンの返済が大きな負担とならない範囲でオートローンの借入額を決める必要があります。
各種ローンの返済額が負担になってくると、必要な支出まで切り詰めることになり、生活の質が落ちやすくなります。ファイナンシャルプランナー(FP)などに相談し、各種ローンを借入れた後の家計のシミュレーションを作成してもらって借入額を判断してもらうこともよいでしょう。
住宅ローン申込み時にオートローンの利用を検討している場合は、いずれのローンもできるだけ金利が低い商品を選ぶことが大切です。金利が低ければ、返済負担率が小さくなるので住宅ローンの借入額を増やすことができる可能性があります。
オートローンの利用は住宅ローンの契約後に
住宅ローンの審査を受け融資承認の回答をもらった後に、すぐにオートローンを申込むことは避けましょう。
住宅ローンの審査時にはオートローンを利用していない状態で審査を受けています。住宅ローン契約前にオートローンを借入れると、審査時の状態と契約時の状態に相違があることになり、場合によっては融資が実行されなくなることもあります。
住宅ローンは自動車の購入には利用できない
住宅ローンを申込む際に、借入金額に自動車の購入資金を上乗せして申込むことができないかという相談があります。上乗せ分を現金として残し自動車購入代金の支払いに回す計画ですが、住宅ローンの資金は自動車の購入に回すことはできません。
4.住宅ローンとオートローンの併用は慎重に
以上のように住宅ローンとオートローンは注意点に配慮すれば併用することができます。
しかしオートローンは住宅ローンと比較して、借入金利が高く返済期間が短いため、毎月の返済が家計の負担になることがあります。
なお最近はオートローンを利用して車を購入するのではなく、一定期間終了後に残価で車を下取りする「残価設定ローン(残価型クレジット)」という仕組みが普及してきました。
残価設定ローンの返済額については、通常の毎月の返済額として返済比率の計算に含める金融機関と、残価の総額を住宅ローンの借入額に合計して計算する金融機関があります。このタイプのローンを利用している方は、住宅ローンの申込み前に窓口で確認しておくと良いでしょう。