昨日設計図は長期優良住宅なのに、実際の現場はそうなっていないという事例がたくさんあると書きましたが、具体的にどんな点ですか?という質問をいただきましたので事例を一つお話します。
長期優良住宅の認定を受けるためにクリアしなければならない項目に「維持管理対策等級3になっていること」があります。この等級は品確法に定める仕様のことです。
具体的には給排水管が基礎コンクリートの中に埋め込まれると、将来交換しようとする場合基礎コンクリートを壊さないといけません。
これを防止するために給排水管を覆う「さや管」という管を先に施工しておき、その中に給排水管を通すことでコンクリートを破壊しなくても管の交換ができるようする対策です。住宅を長く維持管理するために有効な措置です。
このさや管は基礎コンクリートを打設する前に、基礎配筋の合間を縫って設置します。
となるとさや管と基礎鉄筋の間にスペースが必要になります。このスペースにコンクリートが流されることで鉄筋が直接外気に触れないようになりますが、このスペースのことを「コンクリートのかぶり厚」と言います。
かぶり厚は一般的に40㎜必要とされています。
仮に基礎鉄筋の間隔が150㎜ピッチの設計になっているとき、口径100㎜のさや管を設備屋さんが設置しようとすると150㎜-口径100㎜-上部かぶり厚40㎜-下部かぶり厚40㎜・・・かぶり厚が取れません。
設備屋さんには基礎配筋を変更する権限はないし、ひょっとすると配筋に関する知識もないかもしれません。
基礎屋さんが配筋したので問題なかろうと考え、かぶり厚がないままさや管を設置して帰っていきます。
かぶり厚がないということは、さや管回りのコンクリートの厚みがないことになり外からの湿気・水分が浸透しやすく、結果鉄筋が劣化しやすくなります。
これでは何のための長期優良住宅なのかわかりません。
本来なら基礎の設計段階で設計士さんが配慮して、その部分の鉄筋間隔を広くし、その分補強を増すという対応が必要でしょう。
あるいは現場に監理に出て来る設計士さんが、その場で対応を指示するという手もありますが、何度も書いているように監理建築士が現地に来ることはほとんどないので、設備屋さんの独断で進んでいってしまうのです。
この例は最も分かり易い例なので書きましたが、現場はこんなことが一杯。長期優良住宅は設計力・施工力で差が出やすいので事例も出しやすいのですが、普通の住宅でも同様のことが起こっているのです。
今回の事例を防止するには、
①施工中に第三者の検査を入れる
②ハウスメーカー・工務店選びの段階から基礎配筋の設計方針を確認する
ということ位しか思いつきません。
昨日に続いて同じことをお願いします。
弊社に家づくりのコンサルを依頼される皆様には、間取りやインテリア・設備などの楽しい打ち合わせの最中から「基礎はどうなっていますか?」などと無粋なことを聞きますが、着工後にこういうことにならないようにお尋ねしている訳ですのでご容赦くださいね。