不動産トラブルについての判例集を読んでいる話を書いてきましたが、具体的にどのようなケースが書いてありますか?という質問があったので1つだけご紹介します。
実際の話はもっと複雑ですが、簡潔にまとめてご紹介します。
買主Xは売主Yから土地を買った。売買契約書の特約には「調査の結果、土壌汚染が発見され改良が必要な場合は、売主Yが費用を負担する」となっていた。
調査の結果、土壌汚染が発見され、買主Xは土壌汚染対策費を売主Yに請求したという裁判。
普通に考えたら売主が負担するものと思いますが、判決はそうならず買主敗訴。
本土地の汚染は、法律上の健康被害が生じるおそれに関する基準には該当していないので、土壌汚染対策法上の要措置区域に指定されなかった。したがって売主は法に基づく汚染の除去等の措置を講じる義務を負わない。
このような判決です。
つまり特約の「改良が必要な場合」という文章の中身を具体的に決めていなかったために、法律が持ち出されて「土壌汚染対策法で改良が義務付けられるような場合」でない限り、売主は責任を負わなくても良いとされたのです。
これを教訓に特約を書き直すのなら・・・
「土壌調査によって、土壌汚染対策法に定める土壌溶出量基準値を超えた数値の物質が検出された場合、その原因・範囲・程度に関わらず、売主の責任と負担をもって汚染の除去等を行うものとする」あたりになるでしょうか?
つまり何事も具体的に誰が見ても判断できる内容にしておかないといけないということです。
こんなレベルまで不動産仲介業者が特約を作れるように要求するのは無理というものですが、日常の不動産売買契約ではよくあることです。
くれぐれも契約内容にご注意ください。