先日、自民党税調の宮沢洋一会長が、2022年度税制改正で住宅ローン控除を縮小することを検討中と発表したところ、「住宅を買うなということか!」とか「景気減退になる!」などの批判が多数寄せられたようです。
この批判はまったく見当違いの誤解です。
今回の住宅ローン控除の縮小は、昨年度税制改正で控除期間「13年間」(原則10年間)を延長したうえで、対象となる住宅の延床面積を50㎡から40㎡に引き下げて拡大したとき、会計監査院から指摘を受けた「税金の無駄遣い」を是正するために行うことで、すでに昨年決まっていたことです。
「無駄遣い」とは、例えば変動金利型住宅ローンの金利が0.3%台の商品がある中、ローン控除でローン残高の1%が所得税・住民税から還付される現在の制度では、差額(1%−0.3%=0.7%)が儲かってしまうことを指します。
この仕組みだと、本来現金で住宅購入ができる人も、敢えて住宅ローンを借りることで差額を儲けることになり、税金を使った個人投資になってしまいます。
この投資部分をなくそうというのが今回の縮小であり、もともと住宅ローンを使って家を買おうとしている人には何ら影響はありません。(もちろん差額が儲からなくなるという影響はありますが、住宅購入に直接影響があるものではありません)
したがって縮小は新築住宅着工件数に影響を与えて景気が低迷するという批判も正しくありません。
本来現在の日本の住政策は「フロー(新築)からストック(既存・中古)へ」というのが原則になっています。(住生活基本法)
にもかかわらず新築重視の制度・税制が残っているので、いつまでもストック資産の価値が上がりません。
以前ほどではないにしても、木造住宅なら新築25年にもなれば価値はゼロと査定されるのが現状です。
3000万円で買った住宅が25年でゼロですよ!目先の景気低迷を心配するなら、こちらの方を心配した方が良いのではないでしょうか?
こんなことですから日本の国民は住宅資産で豊かになれないのです。
今回のローン控除縮小は当然のことで、さらにできることなら新築優遇の控除制度を廃止して、ストック重視の控除制度に転換してもらいたいと思うほどです。