前回は最近の間取りづくりにみられる特徴をいくつか具体的にご紹介しましたが、今回は具体的なことではなく傾向として感じることを書いてみます。
最近家づくりを目指される方、多くは一次取得者層と言われる20歳代後半から30歳代の方ですが、お話ししていると、「注文住宅で細かく打ち合わせするのは面倒くさいので建売住宅で良い。」と言われる方が増えています。
この傾向には、ハウスメーカーや工務店の人たちと話していても賛同されます。
確かに最近の建売住宅はそれなりにおしゃれですし、設備も充実して来ています。間取りもしっかり検討して設計されており、注文で新築するのと遜色はありません。
また立派な設備仕様でない建売住宅でも、工務店の経営努力で若い人でも購入しやすいローコストで販売されており、同程度の住宅を注文で作るときのコストと比較して安く済んでいます。
まったく同じ住宅を建売と注文で建てた場合の建築コストは、グレードにもよりますが、少なくとも15%は差が出ていると思います。
また一次取得世代の人たちの意識も変わってきているのでしょう。この人たちはいわゆるバブル景気を知らない世代で、低成長・デフレ時代しか経験していないので、住宅に過大な価値を求めることがないということもあるかも知れません。
バブル期のように住宅に過大な投資をするのは浪費だという意識があるのでしょうか?
新築より建売が好まれている状況を統計で見てみます。
平成10年の新築住宅着工件数は1,198,295戸でした、そのうち注文(持ち家)は430,952戸(35.9%)、分譲(マンション含む)288,738戸(24.0%)でした。
これが令和元年は総戸数905,123戸、注文288,738(31.9%)、分譲267,696戸(29.5%)です。
着工件数が減った分の半分を注文が占めています。(残りは貸家)分譲の戸数はそれほど減っていませんが、注文は大きく減らしています。
日本には「住めば都」という言葉があります。どのような家でも住んでしまえば、それなりに快適ということですが、そう思えるのなら注文にこだわる必要はないということでしょうか?
※ちなみに注文の場合、親所有の土地の上に建て替えるのならコストも安く抑えられますが、通常親とは同居せず新規で土地を探す人が多いと考えられるので、コストもかかるし、そもそも都市部では適地が少ないという事情も影響していると思います。
一概に分譲が支持されているのではなく、土地がないので分譲購入という選択の方も多いと思われます。