先日のご相談は、建築士の○○先生に設計を頼もうと考えているので、御社(住宅相談センター)に建築中の第三者監理を依頼しなくても大丈夫ですよね。」というものでした。
私の回答は「○○先生がきちんと現場監理をしていただけるなら大宇丈夫だと思いますが、弊社の経験上デザイナーズ系の先生は現場監理が苦手な傾向があるので・・・」というものでした。
○○建築士は当地区では有名なデザイナーズ系の設計士です。設計力や「作品」としては評判ですが、現場監理の評価は表に出て来ないし、仮に何か問題があったとしても、それは建築士の問題ではなく施工業者の問題とされることが多いので、正直なところ監理能力はわかりません。
そんな中、先日築25年の鉄筋コンクリート造の既存(中古)住宅の購入を検討されているお客様からの依頼で、ホームインスペクション(住宅診断)をしてきました。
いわゆる超豪邸で、新築当時は1億円を超えていただろうと推測される住宅です。設計図を見ると、これまた有名なデザイナーズ系の建築士先生。売出価格もそれなりの高額です。
診断の結果は「購入するには一定の問題があります」という報告になりました。
鉄筋コンクリート造は、中心に鉄筋を配筋し、その回りをコンクリートで覆うことで強度を確保する構造です。鉄筋から壁や基礎の表面までをアルカリ性のコンクリートで覆うことで、酸に弱い鉄筋を保護して強度を長く保つのです。
ところが鉄筋からコンクリートの表面までの距離(かぶり厚=コンクリートの厚み)が不足していると問題が起こります。
かぶり厚が不足すると、表面にかかった雨がコンクリート内に浸透し、距離が短いために鉄筋に到達し、鉄筋を酸化させるので錆が発生します。
この錆がひどくなるとコンクリートの表面に赤褐色の錆汁が浮き出てきます。こうした箇所が多数ありました。
これが進行すると、鉄筋の錆が浮き上がってコンクリートを押し上げるので表面が盛り上がってきます。この箇所も複数。
さらに進行すると、鉄筋の体積が膨張してコンクリートを破壊する爆裂という現象を起こし、コンクリートが落下し鉄筋が見えるようになります。
こうなるとこの住宅の強度はどうなのか?
今回の住宅は、これらの現象が複数見られましたので、強度や耐久性に疑問が残り、また将来のメンテナンスに費用がかかると考えられるということで購入は見送りになりました。
これは建築時にかぶり厚を監理していなかったことが原因で発生したものと考えられますが、有名な建築士の方の設計であっても、監理業務がなされていなければ豪邸も台無しという事例です。
すべての建築士さんが現場監理をしないということがありません。良心的な建築士さんも多いのですが、有名なとかデザイナーズ系の建築士さんと言うと、どうも監理が心配になるのは私だけでしょうか?