弊社とアドバイス契約をされ、既存(中古)マンションを探されているお客様が落ち込んでおられます。ことの経緯は以下のとおりです。
大手不動産仲介業者A社から出されているXマンションの3階の部屋が気に入って検討していたところ、別の大手仲介業者B社から同じマンションの10階の部屋が売り出されました。
お客様は10階を購入したいのでA社に対して「B社から10階の部屋が出ているので、そちらを紹介してほしい。」と依頼しました。
A社がB社に問い合わせたのですが、なかなか返事が返ってこない。相当な期間待ったのですが動きがなかったので、お客様はA社に承諾をもらってB社に直接問い合わせしたところ、すぐに内覧OKとなりました。
そこでお客様は不審に思われたのです。
A社から問い合わせてもOKが出なかったのに、なぜ直接問い合わせたらOKになるのか?
いろいろ調べられた結果、これが不動産業者による「囲い込み」であることがわかり、さらに不信感が。
「こんなことでは不動産業者は信じられない。住宅を買うのを止めて一生賃貸生活でも良い。」とまで思われたそうです。
この話はこういうことです。
B社はA社が紹介したお客様が10階を購入すると、仲介手数料は10階の売主からしかいただけません。買主の手数料はA社に支払われます。
B社に直接行ったお客様が10階を購入すれば、10階の売主と買主双方から手数料がもらえます。売上が倍違うなら、10階の物件をA社に紹介するのをできるだけ遅らせた方がよい訳です。これを「物件の囲い込み」と言います。
またA社にとってもB社が出している10階を購入されると、自分が出している3階の部屋が売れなくなり、3階の売主からもらう手数料と買主からもらう手数料、倍の手数料が入らなくなるので、できればB社の物件を案内したくないのです。
このからくりを知ってしまったお客様は、当然のことながら客である自分の利益はどうなるのかと思います。
日頃「お客様の満足のために」などとPRしている不動産会社が、結局は自分の利益優先で考えていたわけですからショックは大きい。
「囲い込み」の問題は国土交通省でもいつも問題になっていますが、なくなることはありません。根絶するためには、売主買主双方から手数料を受け取ることができる現在の制度を変えるしかないのですが、これには業界が大反対で遅々として解決ができないのです。
弊社としては、あくまでお客様サイドのアドバイスをするのが仕事ですので、こうした業界の仕組みのお話もさせていただき理解していただいたうえで、再度前向きに購入に向けて立ち直っていただきました。今後の交渉の進め方などについてアドバイスを続けていくことになりました。
業界の裏の話をすることは、必ずしも必要なことではありませんが、弊社のお客様がこのような目に遭ってしまうと、そのような話をしない訳にはいきません。