注文で家づくりをする場合、工事請負契約書を工務店と結びます。工務店はこの契約内容に基づいて工事を進め完成させて施主に引き渡すので、大変重要な内容が書かれています。
工事の発注者である施主はしっかり読んで理解してほしいと思いますが、なにしろ法律用語で書かれているので一般の方には理解できないことも多いと思います。
弊社住宅相談センターに相談をいただくお客様からも「何が書いてあるのかさっぱりわからない。」という声が多いのです。そこで弊社としては1つだけポイントをお話ししています。
それは通常契約書の終わりの方に書かれている「紛争が生じた場合は、建築紛争審査会の仲裁に従うことに合意するものとする」という一文です。
建築紛争審査会とは愛知県のホームページによれば・・・
建設工事の請負契約をめぐる紛争につき、専門家による迅速かつ簡便な解決を図ることを目的として、国土交通省及び各都道府県に設置されています。
審査会の委員は、弁護士の法律委員と、建築・土木の各技術分野の学識経験者や建設行政の経験者等の専門委員から構成されており、専門的かつ公正中立の立場で紛争の解決にあたります。
とあります。一読しただけでは、なんだか庶民の味方のように思えます。
しかし記載があるように委員は建築や土木の専門家で、建築に精通している人なので業界では少しは知られた人たちです。間違っても庶民の味方ではありません。
そこで仲裁を受けるということは、再び愛知県のHPから・・・
・仲裁とは、仲裁委員が建設業法及び仲裁法の規定に則して仲裁判断を行うもので、民事訴訟に代わるもの。
・仲裁を申請するには当事者間の「仲裁合意」が必要です。(これが契約書にある「合意した」というところあたります)
・仲裁判断は、当事者間において確定判決と同じ効力を有する。(仲裁法第45条第1項)
つまり仲裁を受けると判決と同じ効力があるので裁判と同じ効果があるのです。
中立的と言っても建築業界の専門家の委員の仲裁を受ける訳で、決して庶民有利な結果になることはありません。
もちろん手続きが簡単で費用も裁判より安価で結論が早いというメリットもあります。
弊社としては、この条文は外していただいて、紛争が生じたら建築地を管轄する裁判所を第一審の裁判所として訴訟をするという文章にしていただくことをお勧めしています。
あるいは「仲裁に合意する」という部分を省いても良いでしょう。
いずれにしても建築紛争審査会に持っていくことは避けなければなりません。請負契約書にはこのようなことが書かれているので注意して読んでいただきたいと思います。