この仕事をしているとときどきハウスメーカーや工務店から相談を持ち掛けられることがあります。

その内容は「家を新築しているが施主の要求が細かすぎて自社の能力では対応できない。うちが間違っていないことを第三者の立場で証明してくれませんか？」というものです。年に数件あります。

弊社住宅相談センターがある中京圏は自動車産業や航空産業を中心とした製造業が盛んな地域です。これらの産業に従事している人たちは、日頃からミリ単位、ミクロン単位で製品を造っています。

何しろ自動車は時速１００Ｋｍ以上で走行するにもかかわらず、安全性を要求されるわけですし、飛行機やロケットになればさらに上の性能を求められます。設計図に従って精密に造るのは当然です。

そのような産業に従事している人が家づくりを始めると、なぜ家の設計図はミリ単位、ミクロン単位で描かれているのに、現場はそうなっていないのか不思議で仕方がないのです。勢い「設計図通りに施工しろ！」と要求するのも理解できます。

請ける側のハウスメーカー・工務店は、今までそんなことを言われたことがないので、「自社に能力を超える要求」と考えるしかありません。

これを自社で説明すると言い訳としか伝わらないので、ますます施主のクレームのテンションが上がってしまいます。

このようなことを避けるには、家づくりの最初の段階で「住宅とはこのようなものです。」ということを理解していただく必要があります。この作業を省略して家づくりに入ると、日頃ミリ単位の仕事をしている人の常識と家づくりをしている人の常識がぶつかってしまいます。

あるハウスメーカーの担当者がこんなことを言ったそうです。「普段自動車の設計をされているお客様はそのようにおっしゃいますが、住宅は時速１００Ｋｍで走りませんから。」名言です！