押出法ポリスチレンフォームやビーズ法ポリスチレンフォームなど発泡系プラスチック断熱材は、広く利用されているグラスウールと比較して熱伝導率が低く施工も容易であることから、コストは多少高くつきますが多くの住宅の新築現場で使用されています。
実験データによる部材個々の性能をみても、優れた断熱材であることは否定できません。
しかし私は実験データが「部材個々の性能」というところが気になります。部材個々に熱を加えて機器で測定する実験だと思いますが、その結果に異議はありません。
ただ断熱材は建築現場で使われるものであって実験室で使用されるものではありません。
例えばポリスチレンフォームは板状の部材なので壁なら間柱と間柱の間に、屋根裏であれば垂木と垂木の間に設置されるものです。
間柱や垂木は木材であって生き物です。経年すればしなりもするしたるみもし変形しますが、この間に設置されている板状の断熱材は直線的なので変形したものとの間に隙間が生じるのは自然の成り行きです。
せっかく新築時に隙間なく設置した断熱材でも多くの隙間が生じることになるのです。経年ならまだしも、新築中の現場ですらすでに隙間が生じていることがあり、その隙間を埋めていただくようにお願いすることも多いのです。
直線的なポリスチレンフォームが木材のしなりやたるみに合わせて変形してぴったりフィットしてくれるなら問題はありませんが、そんな性質を持っているとは聞いていません。
結果、ポリスチレンフォームは個々の部材としては断熱性の高い物質ではありますが、生きている建物に使用すると100%実験結果を発揮することができない。そう考えておく必要があります。
そこで個人的には吹き付け系の断熱材を使用することをお勧めすることになります。実験データを過信しない方が良いと思います。(これはより広く使用されているグラスウールにも言えることです)
参考までにその実験データを書いておきます。
【JISの部材ごとの熱伝導率】
グラスウール 24K 0.038
高性能グラスウール 24K 0.036
ビーズ法ポリスチレンフォーム 特号 0.034
押出法ポリスチレンフォーム 1種 0.04
吹き付け硬質ウレタンフォーム(現場吹き付け型) 0.026