ある不動産業者団体の研修会に呼んでいただき、『実務に役立つ!インスペクションと安心R住宅』というテーマでお話をしてきました。
私の話の前に団体から業務連絡があり、「行政からのお知らせです。最近建築物を勝手に用途変更して使用したり、売却する事例が増えていますが、今後行政としては厳しく監視していくとのことですので、実務家のみなさんは十分注意してください。」という話がありました。
タイムリーな話でしたので、私のセミナーの中でも事例を挙げて取り上げました。
「分かり易い事例を挙げます。個人の専用住宅として建築確認を取った自宅を、シェアハウスとして多数の人に賃貸することは問題ないでしょうか?」
実はシェアハウスは建築基準法上「寄宿舎」として扱われることになっています。従って「専用住宅」をシェアハウスにすると建築基準法違反になりますと申し上げましたが、どうもピンと来ていない様子です。
その後、ホームインスペクション(今回は瑕疵保険の現場検査)について質問がありました。
「現在店舗兼用住宅ですが、買主は店舗部分を住宅として使用するつもりです。この場合、全体を住宅と見なして既存住宅売買瑕疵保険を付保することはできるでしょうか?」
この問いに対して「店舗部分を住宅として用途変更していただいた後なら、全体を住宅と見なして全体に保険を付保することは可能です。」と回答しました。
質問者は「店舗として使うつもりは全くないのですが、用途変更しないといけないでしょうか?」と再質問。
「そうです。」
私も仲介業者でしたからよくわかるのですが、一般的に仲介業者さんは「建築基準法上の建物の用途」については無頓着です。というより用途によって建築基準法上の扱いが異なるということも完全に理解されていないと思います。
「店舗」として確認を取っている建物を「住宅」として使用するなら、用途変更をしなければダメだと思います。でなければ実態と異なる用途で建築確認を下すこともできてしまいます。
業務連絡の中では「市街化調整区域で農家用住宅として許可を取得して建てた住宅を、何年か後に農家でない人に売却するのは要注意。そもそも資格のない人に売ることになるので、あとで買主が知ったら損害賠償請求されることが考えられます。」という注意を呼び掛けていましたが、果たしてこの程度の注意喚起で問題が起きなければ良いと思いますが・・・
従来ここに挙げた事例程度なら見逃されてきたと思いますが、今後は業務連絡にあったように厳しく監視監督されることになると思います。ここにも「土地から建物へ」という流れが見えます。
不動産業者さんは宅地建物取引士ですから、宅地にも建物にも精通していたければならないのです。大変な時代が来ました・・・